観光業界のSDGs

SDGsってなに??

SDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)は誰一人取り残さない持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。2015年の国連サミットにおいて全ての加盟国が合意した『持続可能な開発のための2030アジェンダ』の中で掲げられました。2030年を達成年度とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。

引用:外務省

簡単に説明しますと、より良い未来(世界)のために具体的な目標を立てて、経済や教育・気候や平和などさまざまな問題解決を実現できるようみんなで取り組んでいきましょう!ということです。

普段の生活ではあまり意識しないですが身近なことでいいますと、地球の温暖化、豪雨災害がここ数年で増加していることや、プラスチックのストローが紙ストローに代わったこと、レジ袋有料化にともないエコバッグを携帯し使用する人が増えたことなどもSDGsと関係があるんです。

旅行業界でいいますと、『サステナブルツーリズム=持続可能な観光』という言葉をよく耳にします。実は旅行をすることで環境が汚染されたり自然が破壊されたりと、それぞれの観光地にある本来の良さというのが失われてきているのが現状です。観光バスでの移動や、飛行機を頻繁に利用することも本当は環境にはよくないことなんですね。とはいえ現実問題として移動なしに観光というわけにはいかないですし、わざと環境破壊をしに旅をしているわけでもありません。だからこそ、観光地・自然・観光客が未来にわたって共存できるよう、自分にはいったい何ができるのか、新しい観光の在り方というものを考えてみたいと思います。

旅行会社の現状

旅行と結びつけるSDGsといっても、イメージがわかなかったり、何をすればよいのかわからないというのが現状です。

JTB総合研究所が『観光産業におけるSDGsの取り組み推進に向けた組織企業団体の状況調査』を行った結果、SDGsに取り組んでいる旅行業は16%と全体で最も低い数字だったそうです。また、従業員の方がSDGsについて理解しているかの調査では『内容は知っているが対応はしていない』『聞いたことがない』という人が多数を占めました。また、旅行者においては多くの方が環境に配慮したサステナブルツーリズムの関心があると答えています。ただ、旅行者に関しても旅先で何をすればサステナブルな観光になるのか具体的にはわからず行動にうつせていない人が多いという現状です。

例えば、旅行者目線で言うサステナブルツーリズムの取り組みとは、①無駄なゴミの量を減らす、②宿泊先では無駄な電気は使わない(部屋を出るときにはエアコンを消す)、③近い距離ならば移動手段を徒歩にする、などが考えられます。ちいさいことですが長期的に見ると自然を守ることになり、観光地である世界自然遺産の保護にもつながります。

現在、大手旅行会社が率先して環境や雇用など多岐にわたる問題に対してSDGsの取り組みを行っていることが、自然だけではなく観光に携わる業者や地域の方々に貢献することにもつながります。しかし中小旅行会社においては経営者が推進している内容をスタッフが理解していないことや、SDGs宣言だけをして実際には行動に移さない・移せない(必要な時間や人員が不足していることや予算が確保できないことも含め)会社も多くあるのではないかと思われます。

実はSDGsに取り組む宿泊施設は多いのですが、そのような宿泊施設を利用した旅行者がどれくらいいるのかというと・・・『存在を知らなかった』『探し方がわからなかった』という声が聞こえてきます。宿泊施設の取り組みが旅行者まで伝わっていない、現状ではそれを探す仕組みが不十分であると同時に旅行者と宿泊施設の架け橋になるはずの旅行業者側が積極的に案内できれば良いのですが、そこまで手が回らない・時間がないなどでSDGsへの取り組みに着手できないというのが現状です。

旅行会社の課題

SDGsの取り組みをしている企業は大手旅行会社をはじめ徐々に増えてはきましたが、まだまだ世界に比べると日本の旅行業界はSDGsに対する意識が低く、経営者と社員一人一人の意識の差はまだまだ大きいです。わかりやすく旅行者にSDGsの取り組みをアピールする仕組みが必要ですし様々な目的がある旅行者に対してSDGsとつながる旅行商品の開発と情報発信も必要です。非日常体験を求める旅行者に対して楽しむことと制限することのさじ加減はとても難しい問題ではありますが、旅行会社がリーダーシップを取りながら旅館やホテル・観光施設・組合やその他の企業・自治体と連携を取りながらSDGsの取り組みを広げていかなければなりません。

今後の取り組み

観光産業の認識としては自然環境問題を取り上げることが多く、短期的な目線ではなく中長期の視点でSDGsに取り組んでいかなければならないと感じます。大手旅行会社だけではなく、中小旅行会社が経営者だけではなくスタッフも含めて積極的にSDGsに取り組むことが未来の観光業界や旅行者のためには重要である。

旅行者が過剰にSDGsを意識せずとも、旅行をすることで自然とサステナブルツーリズムに貢献できる環境を旅行会社が作っていければベストです。

例えば、

  1. 移動に関して、徒歩やレンタサイクルを使う区間を設定する
  2. SDGsに取り組んでるホテルを積極的に使う
  3. 案内書面等をペーパーレスにする
  4. 滞在先で早朝のオプショナル散歩ツアーを設定し気分転換の傍らゴミ拾いも行う

など、できることから実践、継続するというのが理想です。

終わりに

一企業として未来への目標を設定することはとても大切です。今後、SDGsの取り組みをしていない旅行会社は相手にされずに取り残されてしまう可能性もあります。未来のこどもたち、そして未来の観光客のためにも、今すぐにでも観光産業は行動を起こさないといけない、頑張らないといけないと思います。

他人事ではなく自分事として、身近なことから始めてみましょう!多くの人がSDGsを意識することで2030年の目標達成に近づいていくと信じています。

この記事を書いた人

TAKASHI KOCHI
TAKASHI KOCHI
・総合旅行業務取扱管理者
・総合旅程管理主任者
・トラベルコーディネーター
・エリアスペシャリスト
(ハワイ・オーストラリア)
初めての海外旅行はホノルルマラソン(ヘロヘロで完走)『旅の価値は無限大』を合言葉にこれからの新しい旅行スタイルを提案します